琉球新報連載エッセイ 6/14

優しさの力

東京から宮古島に移住して三年になるが、この島では人の優しさを感じることが多い。

今では島で生まれ育った友人も沢山いる。職業も、会社員、自営、会社経営、教員、公務員など様々だ。皆生きる力が強く、仕事でも遊びでもとても敵わない。その上、とにかく優しい。助け合い精神が色濃く、人との繋がりを大切にするこの島で生きてきた彼らは、困っている人がいると放っておかない。この夏、東京沖縄ツアーを催す宮古島市ジュニアオーケストラも、彼らをはじめ数多くの島人に援助してもらっている。

ジュニアオケのメンバーはそういった環境の中で育った子供達であるから、「優しさ」の持つ力をよく知っているようだ。「優しさ」が音楽をより深く彩るのだ。

音楽の表現の基本は、音の強弱、速さの緩急、音色の使い分けなどで組み立てられる理性的なものだ。しかし上級になると、演奏中の瞬間瞬間における、メンバー間の言葉にできないやりとりが重要になる。指揮者の私が手の動きで示したアイディアに、彼らのリーダーが応え判断し、演奏と体の動きや目配せなどで示し、皆が応じる。メンバー全員の感性が心に響く演奏を創るのだ。この「場」の深い共感こそ、プロ・アマを問わず、音楽の「神髄」である。

人々が共感し愛し合う気持ち、つまり「優しさ」が、音楽の「深さ」を生む。そしてその音楽の「深さ」への感動、つまり生きる歓びが、さらなる「優しさ」を育てる。これが私達の音楽教育の目的なのだ。心地良い緊張感のある舞台の上で、しっかり強い気持ちを持ちながら、嫋やな心遣いのできる彼らだからこそ、すっとこの「神髄」に触れることができるのだ。

何度もこのコラムで述べたように、沖縄には、「優しさ」に象徴される日本の素晴らしい価値観が色濃く残っており、今それが東京でも見直されている。島から羽ばたいていく子供達にも、それに誇りを持って大切にしてもらいたい。そして、彼らが一人前になって島に帰って来た時に、この島の宝が今と変わらずあるように、私達が守っていかなければならないと思われる。

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