琉球新報連載エッセイ 5/3

孤独の力


生徒達に良く話すことがある。「アマチュアオーケストラは、プロオケより聴衆の心に響く演奏する場合も多い。」

メンバーの技量はプロが遙かに勝ることは言うまでもない。しかし、アマチュアの方が練習回数が多いことはもちろんだが、永い付き合いになれば視線の動きだけでお互いのやりたいことがわかるようになるほど団員同士や団員と指揮者の絆も深く、より突っ込んだ表現をしやすい。その上、メンバーがその曲をコンサートで演奏するのは一生に1~2回だ。1回に掛ける情熱と集中力は遙かにアマチュアの方が大きいだろう。感動的な演奏ができるわけだ。

そういう演奏を目標とするなら、オーケストラ練習の前に周到な個人練習が必要だ。楽器は一人きりになって自分自身と真剣に向き合いながらさらうものだ。しっかり準備して合奏に臨む者同士には、信頼と友情が芽生える。孤独に耐えてこその本当の仲間なのだ。この孤独が本当の意味で人間を強くする。そして私達教師との厳しい師弟関係も同様の強い信頼があってこそ成り立つ。

 学業に関しても音楽と同じことがいえるだろう。地元の小中高校でコツコツ真面目に勉強し県内の国立大学に進学し自分の目指す事を成し遂げる道は、一つの幸せの形だと思う。本人が将来をしっかり見据えて、孤独に耐え自己の内面を鍛え目標に向かって努力すれば、誰にでも開かれている道だ。これは、以前このコラムで述べた東京の子供達に深刻な問題を引き起こしている、心を育てることを後回しにした受験勉強とはまったく異なる。永年、東京のど真ん中で親が非常に教育熱心な環境で育った子達を多く教えてきた私達だが、宮古島の子供達はその子達に勝るとも劣らない聡明さと集中力を持っていると思う。そして島には立派な高校があり、安心して子供達を高校まで親元で育てることができる。島で島の将来を担う人間を育てたいと思うのは、皆の気持ちだろう。

これからも優秀な島の跡継ぎが育っていくだろう。その為には、「孤独」が人を鍛えることを教えることが重要だと思われる。
IMG0503.jpg