琉球新報連載エッセイ 3/9

 

神様がくれた能力


二八年間バイオリンを通じて子供達と向かい合ってきて確信したことがある。子供達は皆、自分を本当に大切に思ってくれる大人を嗅ぎ分ける本能的な力を持っている。生まれた時に神様にもらった力だ。

早い子供は二才から五才くらいで私達のスクールを訪れる。始めから本人に意欲などあるはずもなく、ただ、「大好きな両親と大好きな先生が愛している『音楽』」興味を持つ。小学校高学年になると、合奏や合宿などで仲間との触れあい楽しく感じるようになる。一見まだ積極的に音楽に取り組むようになったとは見えないだろうが、「信頼」「愛情」「意欲」という養分を貯えているのだ。

私達にとって、ここからが真剣勝負である。「信頼」の貯えのある子には、私達教師との間に大人同士の関係を築くことができる。「愛情」の貯えのある子には、厳しい師弟の関係を築くことができる。そして「意欲」の育っている子には、音楽を教えることができるのだ。

私達の愛する音楽を生徒たちが大好きになってくれることは、大きな喜びだ。しかし、音楽を通じて自分の大切なものを見つけ、育み、そのために一生懸命努力する、つまり力強く生きる方法を身につけていくことこそが、最大の目的なのだ。子供達は、皆このプロセスの中で発展途上であり、必ず一生懸命である。

大人のできることは音楽を好きになるチャンスを注意深く見守り認めて褒めてあげることだ。いい加減に褒めてもだめだ。本当に素晴らしいところを褒めなければ子供達は納得しない。「褒めるプロ」を自認する私達にとっても、生徒達の演奏の本当に良いところを見つけて本人に上手に伝えるのがレッスンの核心だ。

宮古島は親達も素晴らしい。東京より「勉強しなさい」「バイオリンを練習しなさい」と頻繁に言う親が少ない。それが子供達の心の健やかな成長につながっているし、だからこそ、幼いうちからバイオリンを好きになり結果的によく練習する子が多い。子供達にとって生まれた時に神様からもらった本能的な力を大切にし易い環境なのだ。 IMG0309.jpg