2010年3月アーカイブ

琉球新報連載エッセイ 3/24

故郷を知る為に




この夏の宮古島市ジュニアオーケストラの那覇・東京公演の準備に出かけた。

那覇ではマスコミを廻り協力を要請した。永年県内に音楽を始めとした西洋文化を広める為に大きな役割を担ってきた報道各社が、宮古島の子供達を優しい気持ちで見守って下さっていることは本当にありがたいことだと思う。

翌日は東京に入った。まず、東京都武蔵野市の山上美弘教育長を表敬訪問した。武蔵野市民文化会館は東京西部の市民の為に高い音楽文化を育ててきた。この素晴らしい音楽専用ホールで宮古島と東京の子供達が交流しながら演奏会を催すことが、彼らの心の大きな宝となることをお話した。趣意に賛同し力強く協力を約束して下さった。

さて、宮古島の子供達の力一杯の演奏を是非とも聴いてほしいのは同郷の皆さんである。東京で活躍している宮古人(みゃーくぴとぅー)を訪ね歩く。思った通り東京に永年住んでいてもその人柄は暖かい。そして故郷に貢献してきた方ばかりだ。宮古島伝統の泡盛の回し呑み「おとーり」をして一旦打ち解ければは早い。心のの故郷に対する想いを語り、公演が成功する為いろいろお骨折り下さることになった

次は、パイプオルガンとハープの共演者探しである。せっかくの東京公演で、普段聴くことさえできないこの二つの楽器と子供達をステージの上で共演させたいのだ。宮古島の子供達のことが大好きなオルガニストが無償での出演を快諾。また、ジュニアオケを温かく見守って下さっている東京の企業からハープに関する費用を補助して下さるお申し出をいただいた。

私達が文化庁の芸術家派遣事業等で学校で演奏する合間に「宮古島は本当に素晴らしい所だね」と話し掛けても、子供達はピンとこないことが多いようだ。この環境があたりまえなんて贅沢なことだ。しかし、子供の頃に東京を体験し宮古島と東京それぞれの長所を感じとることができれば、自分の将来の道が見えてきたときに、より深く故郷を知り、愛し、その為に貢献する人に育ってくれると思う。沢山の人々の温かい心がその為の道筋を創ってくれている。
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琉球新報連載エッセイ 3/9

 

神様がくれた能力


二八年間バイオリンを通じて子供達と向かい合ってきて確信したことがある。子供達は皆、自分を本当に大切に思ってくれる大人を嗅ぎ分ける本能的な力を持っている。生まれた時に神様にもらった力だ。

早い子供は二才から五才くらいで私達のスクールを訪れる。始めから本人に意欲などあるはずもなく、ただ、「大好きな両親と大好きな先生が愛している『音楽』」興味を持つ。小学校高学年になると、合奏や合宿などで仲間との触れあい楽しく感じるようになる。一見まだ積極的に音楽に取り組むようになったとは見えないだろうが、「信頼」「愛情」「意欲」という養分を貯えているのだ。

私達にとって、ここからが真剣勝負である。「信頼」の貯えのある子には、私達教師との間に大人同士の関係を築くことができる。「愛情」の貯えのある子には、厳しい師弟の関係を築くことができる。そして「意欲」の育っている子には、音楽を教えることができるのだ。

私達の愛する音楽を生徒たちが大好きになってくれることは、大きな喜びだ。しかし、音楽を通じて自分の大切なものを見つけ、育み、そのために一生懸命努力する、つまり力強く生きる方法を身につけていくことこそが、最大の目的なのだ。子供達は、皆このプロセスの中で発展途上であり、必ず一生懸命である。

大人のできることは音楽を好きになるチャンスを注意深く見守り認めて褒めてあげることだ。いい加減に褒めてもだめだ。本当に素晴らしいところを褒めなければ子供達は納得しない。「褒めるプロ」を自認する私達にとっても、生徒達の演奏の本当に良いところを見つけて本人に上手に伝えるのがレッスンの核心だ。

宮古島は親達も素晴らしい。東京より「勉強しなさい」「バイオリンを練習しなさい」と頻繁に言う親が少ない。それが子供達の心の健やかな成長につながっているし、だからこそ、幼いうちからバイオリンを好きになり結果的によく練習する子が多い。子供達にとって生まれた時に神様からもらった本能的な力を大切にし易い環境なのだ。 IMG0309.jpg

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